Daisy


―――――――っ
「ん??」
今日は、からっと晴れたとても良い天気なので、ここぞとばかりに溜まっていた汚れ物を全て洗濯した。
あまりの量に悪戦苦闘したものの何とか全て洗濯し、今ようやく干し終わったところ。
この天気なら夕方までにちゃんと全部乾きそうだな〜良かったなんてことを考えていたら、何か聞こえた気がしたのだけど……。
いくら耳をすませてみても何も聞こえてこない。
気のせい?っと思い、次の作業にかかろうと戻りかけたとき、
―――――――っ
やっぱり、何か聞こえる。
全神経を集中させて、どこから聞こえてくるのかを探る。
―――――――っ
こっちからみたい、そう思い聞こえて来た方へと足を向ける。
――――――〜っ
先程より大きく聞こえる何かの音を辿ってまた歩みをすすめた。
こっちは境内の裏手だけど、こんなところに何がいるんだろう?疑問に感じながらも音を辿って行った。
境内の裏にまわってすぐに答えはわかった。
「にゃ〜っにゃ〜っ」
どこからか、猫の鳴き声がする。それも、一匹じゃなく数匹いるみたいで鳴き声がひっきりなしに聞こえてくる。
どこから聞こえるんだろう?っと探してみることにした。
「猫ちゃ〜ん?どこ〜??どこにいるの〜??」
そう言いながらきょろきょろと猫を探すけれど、鳴き声は聞こえるのにどうしても姿が見つからない。
どこにいるのだろうかっ……そう思い俯いて溜息を一つ零した途端、
―――――――――――トサッ
何かが自分の背中へと落ちて来た。
「ひゃっ!!」
いきなりの事に驚いて声を上げ、何だろう……っと冷や汗を浮かべていると背中から、
「にゃ〜っにゃ〜っ。」
っと小さな鳴き声が聞こえてきた。
「えっ!?」
背中に感じる僅かな重みに必死に手を伸ばすがなかなか届かない。
「う〜ん、届かないっ……後少しで手が届くはずなのに……。」
そう呟きながらも、手はむなしくも空を切るばかり。どうしようっ何とか落とさないようにしながらここから移動して、
誰かを探して取ってもらおうかと思った矢先、ふいに背中にあった僅かな重みがなくなった。
"えっ?"っと思って振り返るよりも先に声が降ってきた。
「ここで、何をしている?」
振り返ってみるとそこには、子猫の首根っこを掴んでぶらんと持つ斎藤さんが立っていた。
子猫はその斎藤さんの持ち方が気に食わないのか、先程よりも激しく鳴き声をあげた。
「斎藤さん、さすがにその持ち方は可哀想です。ちゃんと持ってあげてくださいっ。」
お礼を言うのも忘れて、わたしがそう告げると斎藤さんは、激しく鳴いていることに気が付いたのか、
子猫のお腹の下に手を入れるように持ち替えた。
「それで千鶴、あんたはここで何をしている?」
斎藤さんは、もう一度同じ質問をした。
そう言えば、お礼も言ってなければ斎藤さんの質問にも答えていなかったことを思い出して慌てる。
「あの、えっと、洗濯物を干し終わったら猫の鳴き声が聞こえてきて、鳴き声を追って来たらここに着いたんですけど……。」
そこまで言って気が付いた。
そう言えば、ここに着いたとき鳴き声は数匹いるようなものだったはずなのに斎藤さんに抱きかかえられているのは一匹のみ。
その一匹も安定するよう抱きかかえられているため今は鳴き声をあげることなくおとなしくしている。
目の前にいる子猫が鳴いていないのだから、他の猫の鳴き声がしてもいいはずなのに、どこからも鳴き声は聞こえてこない。
数匹いるように聞こえたのは気のせいだったのかな……??
そんなことを考え始めたら、斎藤さんが再び口を開いた。
「それで、総司はここで何をしている?」
沖田さん!?最初ここに来たときここには誰もいなかったはずだった。
斎藤さんが来るまでの間に誰か人が来たような感じもしなかったので、斎藤さんの言葉に驚いた。
「えっ!?」
そう言って勢いよく振り返ると、そこには子猫を二匹抱えた沖田さんがにっこりと微笑みながら立っていた。
「何って、見ればわかるでしょ?子猫を抱っこしてるんだよ。」
沖田さんの言葉に斎藤さんは嘆息しながら言った。
「それは見ればわかる。ここで猫を抱えて何をしている。」
「子猫を抱えて立ってるんだよ。」
沖田さんは斎藤さんの質問に答えているようで全く答えず、楽しげに笑いながら続けた。
「やだな〜一君ともあろう人が、そんなの一目瞭然でしょ?」
斎藤さんは無表情のままで無言になってしまい、沖田さんは相変わらずにこにこ笑っている……。
この場の空気に耐えかねて何か違う話を……っと考えるものの、こんな時に限って何も思いつかない。
何か話題を……っと必死に頭を巡らせていると、沖田さんに抱えられている子猫の一匹が鳴き始めた。
「にゃ〜っにゃ〜っ。」
一匹が鳴き始めると、他の猫もつられて鳴き始めた。さながら、一人の子供が泣き出すと伝染して他の子も泣き始めるかのように。
「どうしたんでしょう?お腹でも空いたのでしょうか?」
にゃ〜にゃ〜っと鳴く子猫を見ながらそう言った。
「そうかもね。この子達のお母さん猫も見当たらないし、とりあえず何かあげてみたら?」
沖田さんの言葉にわたしは頷きながら答えた。
「そうですね。お魚を細かくしたものでいいですよね?」
「それで、いいんじゃない?じゃあ、後はよろしく一君。」
そう言って沖田さんは、斎藤さんへ自分が抱えていた子猫二匹を渡した。
にゃ〜にゃ〜と鳴き始めたときから眉間に皺を寄せ難しい顔をしていた斎藤さんは、さらに沖田さんから子猫を二匹渡され、
鳴き声が三倍になりますます眉間の皺を濃くして言う。
「何だ、総司。何故俺にこいつらを持たせる?」
斎藤さんのその様子を楽しそうに見ながら、沖田さんが答えた。
「だって、僕の隊これから巡察だし。子猫持ったまま巡察なんか行けるわけないでしょ。
……それにしても一君、その子猫を抱く姿よく似合ってるね。」
そう嬉しそうに口の端を上げて三日月型にして笑いながら沖田さんは手をひらひら振り、行ってしまった。
沖田さんの背中を見送ってしばし呆然とその場に立ち尽くしていたが、子猫達の鳴き声にはっと我を取り戻す。
横を見れば、沖田さんの言葉にますます険しい表情になってしまった斎藤さんにわたしは恐る恐る声をかけた。
「あの……、斎藤さん?」
わたしが恐る恐る声をかけたことに気が付いたのだろうか、斎藤さんは先程より表情を軟化させて答えてくれた。
「何だ?」
その様子にほっとしながらわたしは口を開く。
「あの、子猫にあげるえさを用意してくるので、その子達の面倒見てもらっていていいですか……?」
斎藤さんを見上げるようにしてお願いすると、僅かに斎藤さんの頬が赤くなったような気がした。
斎藤さんはわたしから視線を外して黙ってしまい、その様子にやっぱり駄目だよね……っとわたしは諦めてさっきの言葉を取り消すため口を開いた。
「やっぱり、駄目、ですよね……。さっきの言葉は忘れてください。」
胸の前で手を振りながら努めて声を明るくして言った。
子猫達は可哀想だけれど、わたしは新選組屯所に居候の身。
最初の頃より皆さんに信頼されるようになって、屯所内であれば自由に動き回ることを許可してもらったとはいえ、
そのわたしが勝手なことをするのは良くないだろう。
その時、斎藤さんが勢いよくこちらを向いて言った。
「駄目ではない……。俺がこいつらの面倒を見ておくから、あんたはこいつらのえさを用意してやってくれ。」
斎藤さんのその言葉についさっきまでしぼんでしまっていた気持ちが一気に膨れ上がった。
嬉しさがこみ上げてきて、自然に顔が綻ぶ。嬉しくてたまらない。
「ありがとうございますっ!!」
満面の笑みを浮かべて斎藤さんにお礼を言うと、斎藤さんは再びわたしから視線を外してそっぽを向いてしまった。
先程よりも顔が赤くなっている気がするのは気のせいだろうか?
「早く行って来い。こいつらさっきから鳴き通しだ、底の浅い椀に水も持ってきてやれ。」
斎藤さんのおかしな様子に不思議そうに首を傾げていたら、斎藤さんから言われた。
子猫たちのことを考えてくれてるのだから、迷惑なんてことはないってことでいいのかな……?
すぐそっぽを向かれるから迷惑なのかと心配したけど……。
「早く行けっ。」
少しの間逡巡していたら、斎藤さんに再び促された。
「じゃあ、斎藤さんお願いします。なるべく早く戻ってきますので。」
わたしはぺこりと頭を下げて小走りで厨へと向かって行った。

これくらいなら食べてくれるかな……?
そんなことを考えながら魚を細かく刻んだものと、水を張った椀を持って境内の裏手へと向かって歩く。
ようやく先程の場所に着くと、ひどく優しげな表情で子猫たちがじゃれあっている様子を見ている斎藤さんがいた。
今まで見たこともないような優しい表情に鼓動が速くなった気がする。
「どうした、そんなところで立ち止まって。」
わたしが来たことなんて気配で気が付いていたのだろう、斎藤さんはいつもの感情があまり見えない表情に戻って言った。
「あっ、すみません。猫ちゃんたち、ご飯とお水だよ。」
まさか、斎藤さんに見惚れていたとは言えず、そのことを気付かれないよう慌てて子猫たちにご飯をあげようと椀を地面に置いた。
すぐに子猫たちは気が付いて興味を持ったのかお椀へ寄って来たのだが、
お椀の中をくんくんと臭うだけで、やっぱり食べないかな……?っと不安になってきた。
お願い、食べて猫ちゃん!!そう祈りにも似た思いでいると、一匹がほんの少しだけど食べてくれた。
そのことに嬉しくなりながらも抑えて見守っていると、一口食べてからは、はぐはぐと続けて食べ始めた。
他の二匹も一匹が食べ始めたためか一緒になって食べ始めた。
「良かった……。」
「そうだな。しかし、千鶴が時間をかけて用意したものだ、食べないはずはない。」
嬉しさから思わず漏れた言葉に斎藤さんは、先程見たあの優しげな表情を浮かべて優しく言ってくれた。
再びわたしは鼓動が速くなるのと同時に顔が熱くなるのを感じた。
「……?どうした千鶴、顔が赤いようだが熱でもあるのではないか?」
顔が熱くなったと思ったら、赤くなっているみたい。そのことを斎藤さんに言われ恥ずかしくなり更に顔が熱くなるのを感じる。
「更に赤くなったように見えるぞ、体調が悪いのを隠しているのではないだろうな?」
斎藤さんは案ずるように眉間に皺を寄せ、難しい顔をしながら聞いてくる。
「なっ、何でもないです!!全然元気ですよ!!ほらっ、元気でしょう?」
わたしはそう言いながら、立ったり座ったりを繰り返してみせた。
けれど、斎藤さんはまだ疑っているようで、難しい顔をしたままこちらを見ている。
どうしよう、ただ、恥ずかしかっただけなのに……。
わたしのそんな思いなど露ほども知らない斎藤さんが思わぬ行動に出た。
「熱があるのだろう。」
そう言いながら斎藤さんはわたしの方へと歩み寄り、わたしの前髪を掻き揚げた。
どうしたのだろうと思う間もなく、わたしの額と斎藤さんの額が引っ付けられる。
息が触れ合う程近い距離にある斎藤さんの端整な顔に、わたしは顔がさらに熱くなった。
斎藤さんの深い藍色の瞳がわたしの瞳を覗きこんでいる。
その事がどんどんわたしの鼓動を速くして、顔に熱を集めていく。
「常人よりも少し熱い程度か……。熱があるわけではなさそうだな。」
額をつけたままの状態でそのように言うものだから、恥ずかしさで頭の中は混乱状態になる。
今まで経験したことがない程の鼓動の速さに、顔に集まり続ける熱、それに混乱状態の頭。
極限状態まで追い詰められてもうだめ……
そう思ったとき、いきなり肩を後ろへと強い力で引かれた。
「ひゃっ」
倒れるっと思って身構えたのだけど、倒れることなくわたしの肩を引いたであろう人物に支えられる形となった。
「総司、お前は何をしている?」
肩を押さえられているので振り返れず確認することはできないが、わたしの後ろにいるのは沖田さんらしい。
沖田さんは先程巡察に行くと言っていなくなったはずなのに……。
「それはこっちが言いたいんだけど?一君が子猫と戯れるなんて普通見ることなんてできないから、それを見て楽しもうと思ってたのに、
どうしてか、千鶴ちゃんに口付けしようとしてるし。意味がわからないよね。」
そう言いながら沖田さんはするりとわたしの前へ腕をまわし、わたしのことを後ろから抱きしめた。
沖田さんのその動作にも驚いたけれど、それより何よりも沖田さんの言ったことが頭の中に残った。
口付け……?口付けっ!?
「くっ、くくくくく口付けなんてしようとしてません!!」
「総司、千鶴の言うとおりだ。何故口付けなどという話になる。」
わたしは再び顔を真っ赤にしながら沖田さんの言葉を否定した。斎藤さんも不機嫌そうにしながらわたしの言葉に同意する。
「そうかな〜??僕にはそう見えたんだけどな。
そんなことでもない限り真面目な一君が女の子の顔に自分の顔をあんなに近づけるなんてことないと思うんだよね。」
沖田さん機嫌が悪いのかな?沖田さんは声こそ笑いながらしゃべってはいるようだけれど、
今までの経験からとでも言うのだろうか、どこか機嫌が悪いように感じる。
とにかく、沖田さんは誤解をしているようだからその誤解をまず解かないと!!
未だ顔は熱いけれど幾分か冷静さを取り戻したわたしは、表情を伺うことのできない沖田さんに言う。
「斎藤さんは、わたしの事を心配して下さっただけです!!わたしが体調を崩しているのではないかと、熱をみてくださったんです!!」
わたしは沖田さんの腕から逃れようともがきながらそう告げる。
「だ〜め、離さないよ千鶴ちゃん。でもさ、千鶴ちゃん、考えてもみてよ。
熱をみるだけなら別に手でもかまわないよね?
どうして額同士だったのかなあ〜?下心でもないとそんな風にしないんじゃないかな?」
わたしにまわした腕に一層力を込めながら沖田さんが言った。
斎藤さんは純粋にわたしの事を心配してくれただけなのに、変な風に捉えられていることにむっとする。
沖田さんはいつものように冗談で言っているのだろうけど、それでもわたしは斎藤さんが変な風に思われるのがいやだった。
「斎藤さんはそんな人じゃありませんっ!!いつもわたしのことを気にかけてくださる優しい素敵な方ですっ!!」
言い切ってからはたと我に返ってみれば、先程の言葉、わたしはかなり大きな声で言った気がする……。
わたし、今、優しい素敵な方ですって言った??
優しい方ですと言うはずだったのに気付けばそう言っていた。あまりの恥ずかしさに再び顔に熱が集まってくる。
どっ、どうしよう……。こんな風に言われたら斎藤さんも迷惑だよね……。
でも、言い直したりするのも変だし、だからと言ってそのままにしておいてもいいものなのかな……。
「おいっ、おめぇらこんなとこで何してやがる?って……、どうかしたのか??」
眉間に皺を寄せて不機嫌そうに現れた土方さんは、次の瞬間には怪訝そうにその美しい整った眉を顰めた。
土方さんの質問の意図がわからず、聞き返そうとした矢先わたしの頭の上とすぐ横から聞き返す声があがった。
「「何がです(でしょうか)?」」
「何がじゃねぇよ。千鶴と斎藤は顔真っ赤にしてやがるし、総司は千鶴に引っ付いて殺気醸し出したりしてよ。まあ、総司のはいつものことだな。
お前等のことだ聞かなねぇでも何があったか、だいたい想像はつくが……。」
土方さんは嘆息しながらそう言った。
わたしは、沖田さんに後ろから抱き込まれた状態で真っ赤な顔をしているみたいで、沖田さんはわたしを抱き込みながら殺気を出しているらしくて、
斎藤さんはこちらを見たまま顔を赤くしている。
この状況からどうやったら何があったのか想像がつくのだろうか……?
的外れなことを思っていたら、斎藤さんの後ろから子猫たちがひょっこりと顔を覗かせ、にゃ〜にゃ〜と鳴き始めた。
「何だ?何でこんなとこに猫がいんだよ?」
土方さんが先程よりもさらに眉を顰めて言う。それに沖田さんが飄々とした口調で答える。
「見ればわかるじゃないですか、迷い猫ですよ。」
わたしから沖田さんの表情を伺い知ることは相変わらずできないけれど、きっと満面の笑みを浮かべて言ってるんだろうなと思う。
沖田さんのそんな言葉を予想していたのだろう、土方さんは間髪いれずに返す。
「うるせぇっ、お前は黙ってろ総司。ついでに千鶴を放してやれっ。おい、斎藤っ。」
そして、斎藤さんへと説明を求めた。
「ひどいなぁ、せっかく答えてあげたのに。」
沖田さんはひどいと言いつつもきっと顔は笑っているのだろうと思う……見えないけれど……。
そう思った矢先、土方さんの言葉が聞こえていたのか、それともわたしで遊ぶのに飽きたのか、ようやくわたしの事を放してくれた。
「千鶴がここへ向かう様子に気が付いたため追ってきたところ、この三匹がいるのを見つけました。
ここへは迷い込んで来たのだと思われるのですが、母猫の姿が見えず、腹が減っていたようなので先程、魚を与えました。
俺と千鶴で、およそ一刻半ほどここにいますが母猫が戻ってくる様子はありません。」
斎藤さんの言葉を聞いて、土方さんは頭をがりがりと掻きながら難しい顔をする。
「そんなもん追い出しちまえって言いてぇとこだが……「そんなこと言わないでくださいっ!!
わたしがちゃんと面倒見ます。この子達の食べ物もわたしの食事を減らして捻出します。
だから、どうかそんなこと言わないでください。お願いします、土方さん!!」」
わたしは土方さんに頭を下げてお願いした。
その直後、わたしの頭を優しく撫でる手があった。顔をあげるとそれは土方さんで、
「お前は俺の話を最後まで聞きやがれ。追い出しちまえって言いてぇとこだが、千鶴がそれを良しとしねぇだろう。
だから、しばらくはお前がこいつらの面倒見るってんならここに置いといてやる。」
頭を優しく撫でながらそう、苦笑し、言ってくれた。
「それからな、お前の飯減らしてそいつ等の飯にするなんて必要ねぇからな。そんなことはするんじゃねぇぞ。」
今度は苦笑いじゃなく、優しく笑って言ってくれた。
「はいっ!!ありがとうございますっ!!」


「歳三っ、総司っ、一っ!!ご飯だよ〜っ!!」
魚を細かく刻んだ物を入れた椀を持って中庭へ向かうと子猫達が飛び出してきた。
そして、瞬く間に用意してきたご飯を平らげてしまった。
あの日からこうやって子猫達の世話をするようになったのだけど、名前がないとやっぱり呼びにくいよね、
っという沖田さんの提案により子猫達に名前を付けることになったのだけど……。
「見てこの歳三のふてぶてしさと一のかわいげのなさ!!やっぱり、"総司"が一番愛嬌があるし頭も良いし、可愛いねっ。」
沖田さんは茶色の毛色の"総司"を抱き上げて言う。
"総司"は沖田さんの口をぺろぺろと嬉しそうに舐めた。
「ねっ、千鶴ちゃんもそう思うでしょ?」
沖田さんが"総司"をこちらに見せながら聞いてくるけれど、わたしは苦笑いで返すしかできない。
「にゃ〜っ!!」
黒色の毛色の"一"が斎藤さんの着物に爪を引っかけてしまい斎藤さんに抱きかかえられた状態で暴れている。
常に冷静沈着な斎藤さんには有り得ないような、困ったような表情をしたまま慌てている。
「斎藤さん猫、苦手なんですか?」
「いや、苦手ではない。……だが、どう扱っていいのかがわからん。」
そう言いながらも斎藤さんは困ったような表情をしていた。
普段見られない斎藤さんの表情に、斎藤さんの新しい一面を見れたようで心が温かくなった。
着物が破れたりしないよう注意しながら"一"の爪を外してわたしが抱きかかえると、嬉しそうに喉を鳴らして、わたしに擦り寄ってきた。
「ふふっ、可愛い。」
「千鶴に抱きかかえられていると大人しいのだな。」
そんなことを話しながら斎藤さんとわたしは微笑みあった。


○o.。○o.。○o.。○o.。○o.。○o.。○o.。○o.。○o。○o.。○o.。○o.。○o.。○o.。○o.。○o。○o.。○o.。 ○o.。
あゆむ様リクエストの斎藤さんでSSです。
もっと、甘いモノを。。。っと思っていたのですが、何書こう。。。っと悩んでいたときに、
"薄桜鬼 公式物語絵巻 〜桜花風塵〜"に、沖田さんと斎藤さんがニャンコ抱っこするの図があり、
それを見て斎藤さんの困った顔に萌えてしまい、こんな話になりました(苦笑
いつものように書いてる内に話が二転三転、もっと甘さを入れるつもりが、気付けば沖田さんと土方さんが出張ってきて、
なんか、土方さんが美味しいトコロを持って行ったような。。。
すみません、副長好きなんです!!千鶴に甘い副長が好きなんです!!
千鶴と斎藤さん、お互い惹かれ合っているのだけどお互い自分の気持ちに気付いてない無自覚っという感じで書きました。
初めての斎藤さんSS、わたしなりに頑張ったつもりですが、こんなんですみません、あゆむ様。。。orz
リクエストしてくださったあゆむ様のみ持ち帰り可です。もらってやってくださいm(__)m
ここまで読んでくださってありがとうございますm(__)m

Daisy = 雛菊(花言葉:無自覚、純粋 等)

 

 

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