First Impression〜祐一の場合〜


古い本の独特の匂いと、試験前でない限り人もほとんどおらず、部活に精を出す生徒の声が遠くに聞こえる程度の静かな、この図書室の雰囲気が好きだ。
図書室の空気も好きだが、何より本を読むのが楽しいと思う。
自分の知識が増えていくことは良いことな上に、おもしろい。それに、知識は自分を裏切らないから…。
視界の端に夕焼けに照らし出されて長く延びる自分の影が映った。
もう日も大分落ちてきたのだな…。
読みかけの本から目を上げて、ふと窓の外に目をやると、校庭をまばらに生徒が歩いて下校している姿が目に入る。
視線を空へと動かしていけば、夕日を浴びているからというのもあるだろうが、山の木々が赤く染まっている様が広がっている。
そこから、山の端に徐々に近づく夕日へ視線をつと動かせば、俺の目が捕らえる世界が緋色に包まれた。
しばらくその美しい緋色の夕日に見入っていた。
そう言えば、今日当代の玉依姫がうち(紅稜高校)に転入してくると真弘が騒いでいたな。
視線を先程まで読んでいた本の方へ戻したが、本を読むわけでもなくぼうっと本を眺めたまま、思考は別の方へ巡らす。

つい先週のことだっただろうか。ババ様より重要な話があるので宇賀谷家へ守護五家への召集があったのは。
ババ様からの話は、ババ様の後継者、当代の玉依姫となる者が季封村へとやってくるとのことだった。
当代の玉依姫は、ババ様の娘の娘…、つまりババ様の孫にあたる者で、俺達が幼い頃には、
季封村へ遊びに来ていたこともあるという。
ババ様の娘夫婦が突然の長期出張のため、年頃の娘一人残しておくのは心配だろうという理由で自分の娘を言いくるめ、こちらへ呼んだらしい。
けれど、それは表向きの理由…。
本当は、とうの昔に玉依姫である期間を終えてしまったババ様に変わって、当代の玉依姫になる者を季封村へ招き入れるため。
真弘は当代の玉依姫になる者に興味を持ったのかババ様にいろいろ質問していたが、正直俺にはどうでも良いことに思えた。
当代の玉依姫がどんな人間だろうと俺には関係がない。
ただ、俺が守護五家の血を引く者である以上、玉依姫のことは命に代えても守り抜くだけだ。
玉依姫がどんな人間だろうと、その事実が変わることはない。
守護五家に選択権などないのだから。
それに、季封村へ当代の玉依姫が来れば、守護五家と玉依姫の関係上会わずにはいられない。自ずとどのような者なのかはわかる。
真弘には悪いが、聞くだけ無駄な気がした。
太古の神である玉依姫の血を引いていると言えど、守護五家と…、俺とは違って化け物じゃない。
玉依姫は封印の力を持つ血を引く以外は普通の人間と何ら変わりない存在だ。
だから、普通の人間への付き合い方と同じようにすればいい。
適度に壁を作って、当たり障りないように付き合って、いざというときには守護五家の者として命を懸けて守ればいい。
そうするのが、当代の玉依姫になる人間にとっても、俺にとっても一番良い。
ババ様や美鶴のように幼い頃からの付き合いでないのだから、きっと彼女も、俺たち守護五家の力を目の当たりにすれば、
幼い日の俺の友だった者と同じように、異質な物を見るような表情を浮かべるのだろう。
…あの時まで、意味するものはわからなかったけれどもずっと感じていた違和感。
その違和感が何なのか、友をかばって自分が怪我をしたあの日にわかった。
友をかばって大怪我したハズの俺の怪我は、友が心配して俺に駆け寄ってくるまでの間にどんどん塞がっていった。
自分が太古の神の血を引いていることも、自分が普通の人間よりも怪我の治りが早いことも自覚していた。
けれど、あの時まで自分はそれを自覚していただけで、それが一体どういうことなのか理解していなかった。
駆け寄って来た友の目の前で大量の血を流した傷は跡形もなく治っていった。
その様子を目の当たりにした友の目は驚愕に見開かれ、その瞳には"恐怖"が浮かんでいた。
騒ぎを聞きつけた大人達が集まってきたが、怪我をしたのが俺とわかると皆一様に心配や気遣いの色を浮かべていた瞳が、
安堵を浮かべる色になった。
しかし、その瞳にもまた、友と同じく"恐怖"を見て取ることができた…。
守護五家の人間なら何も心配することはない…そのような囁きが聞こえた。
ああ、そうか。皆、守護五家のことを恐れている。
俺は人間と思われていないんだ。
ただ、鬼斬丸の封印のために必要で、その事がなければきっといなければ良いものと思われているんだ…。

――――ガラララッ
図書室のドアが開く音がした。
その音で、意識が戻ってきたのを感じる。ただ本を眺めていただけだった焦点が本へ定まった。
ドアを開けた主は、図書室のドアを開けたままその場へ立ち尽くしているようだ。
ちらりとドアの方へ視線をやると、そこには、みたことのない女生徒が立っていた。
栗色のロングヘア、髪の色と同じ栗色の真ん丸で大きな瞳。
その大きな栗色の瞳を縁取るように長い睫毛が頬に影を落としている。
長い髪は、すらりとした体型によく似合っている。
この気を持つ人間はこの村には一人しかいなかったはずだが、目の前にいる人間と俺の知る人間は一致していない。
当代の玉依姫か……。守護者の血がそう教えてくれる。
……ババ様に全然似てないな…。
綺麗…いや、可愛いか…。


当代の玉依姫は美人(可愛い)に1票が投じられた。


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First Impression3作目は祐一先輩です!!
絶対に、守護五家メンバーは珠紀を最初から可愛い!!っと思っていて欲しいって願いと、
ドラマCDネタから書き始めたものの…祐一先輩人間嫌いだし。。。orz
珠紀をそんな風に思うなんてあんの!?って感じなんですけどね。。。
まあ、でも人間嫌いでも、普通に可愛いとかは思ってて欲しいっていう鞍河の願望です。
とりあえず、このシリーズ?は守護五家として思ってること、玉依姫について思ってることと、初対面の珠紀をどう思ったかってなのを書こうとしてるんですけど…
独白的なとこがいつも長くなってしまいます。。。
今回の祐一先輩のなんて、珠紀への印象とってつけた感じだし。。。
でも、祐一先輩は最初可愛いとは思っても前に書いた拓磨や真弘よりもドライだったんじゃないかって気がします。
かなり駄文・まとまりがない文章ですみません。。。
ここまで読んでくださってありがとうございますm(__)m

 

SAKURA6.JPG - 838BYTES緋色の欠片TOPSAKURA6.JPG - 838BYTES