Love = Jealousy + Fortune + ・・・


「かなでちゃ〜んっ!!」
オレの大切な、大好きなかなでちゃんの姿を確認するや否やオレはダッシュでかなでちゃんの下に向かった。
ぶんぶんと手を振りながら走っていくと、かなでちゃんも手を振り返してくれた。
「新くんっ。」
笑顔で手を振り返してくれるかなでちゃんを見ると、あ〜やっぱりすごく可愛いな〜っと改めて思う。
自分の目の良さを忘れてかなりの距離を猛ダッシュしてしまったせいで、かなでちゃんの下に着いたときには、さすがに少し息が切れていた。
「大丈夫、新くん?」
かなでちゃんが心配そうに声をかけて、ハンカチでパタパタとオレを扇いでくれる。
「ふぅっ……、早くかなでちゃんに逢いたくって。」
ようやく息が落ち着いて、笑顔でそう言うと、途端にかなでちゃんの頬に朱が差すのがわかった。
かなでちゃんのその反応にオレは満足する。やっぱりかなでちゃんの照れる顔って可愛いな〜。
そんなかなでちゃんの照れた顔を見れた幸せに浸っていると、
「いったい、新は何のためにここに来たんだよ。」
呆れた、っというような声が聞こえてきたので、かなでちゃんの横に視線をずらす。
オレと同い年のいとこの悠人が呆れたように嘆息しながらオレの方を見ていた。
「あれっ、悠人いたんだ?」
少しの皮肉を込めてそう言うと、案の定それにカチンときたらしい悠人が言葉を返してくる。
「当たり前だ。僕は星奏の生徒でここは星奏学院なのだからな。」
大真面目に返してくる悠人に更なる一撃をくらわせるべく口を開いた。
「そんなことはわかってるよ。オレが言いたいのは、かなでちゃんはオレ等の案内のために、ここにいてくれてるのはわかるんだけどさ、
何で悠人までここにいるの?悠人は別に案内役じゃないだろ〜?」
「ぐっ……。」
悠人の思惑をつくことを言うと、悠人は言葉に詰まったようだ。
その悠人の様子にオレは満足したのだけど、かなでちゃんの一言で溜息をつきたくなった。
「わたし一人じゃ心配だからって、水嶋くんはついて来てくれたんだよ。」
「そっ、そうなんだ。小日向先輩だけだと心配だから一緒に来たんだよ。」
絶対にそんなことあるはずがない。かなでちゃんは悠人の言うことを純粋に信じてそう思っているみたいだけど、
悠人は間違いなく、かなでちゃんと一緒にいたかったから来たんだ。
かなでちゃんの素直すぎるところとか、純粋さはかなでちゃんの音楽にも如実に顕れていて、それはかなでちゃんの美徳だとは思うんだけど……。
少しくらい男の言うことなんだから疑おうよ、かなでちゃんっと思う。
「はぁっ……。」
オレはかなでちゃんに気付かれないよう嘆息した。
「新くん。ところで八木沢先輩とか火積くんはどうしたの??」
「う〜ん、そろそろ着くんじゃないかな〜?オレはかなでちゃんに少しでも早く逢いたくて先に来たから。」
にっこり笑ってそう言うと、かなでちゃんはオレの思った通り、頬を赤くしていた。
「あっ、新くんっ……。」
オレの言葉に恥ずかしがるかなでちゃんがオレの名前を呼ぶ。かなでちゃんの鈴を転がすような声は耳に心地良い。
やっぱり、かなでちゃん大好きだな〜っとしみじみ思っていると、その気持ちを吹っ飛ばすような恐ろしい声が聞こえてきた。
「水嶋っ!!お前一人勝手な行動取んじゃねぇっ!!」
「まあまあ、火積落ち着いて。他校で怒鳴ったりするのは、さすがにまずいから。」
オレに対して怒る火積先輩の声と、それをなだめる八木沢先輩の声だ。
八木沢先輩達が着くとかなでちゃんは深々と頭を下げた。
「至誠館高校吹奏楽部の皆さん、わざわざ星奏まで足を運んでいただき、ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ合同練習のお誘いありがとうございます。」
かなでちゃんがお礼を言うと、八木沢先輩がそれに答えた。
「音楽室はあちらなので、ご案内します。着いて来て下さいね。」
あ〜あっ、みんなもう着いちゃったし、せっかく先に来たのに、悠人のせいでかなでちゃんとあまりしゃべれなかったし。
がっかりしながらかなでちゃんの後ろを歩いていると、楽しげに話す八木沢先輩、火積先輩、かなでちゃんの声が聞こえてくる。
「お久しぶりです、八木沢先輩、火積くんっ。久しぶりにお会いできて嬉しいです。」
かなでちゃんが満面の笑みを浮かべてそう言うと、八木沢先輩も笑顔で答えた。
「久しぶりだね、小日向さん。最近調子はどう?オケが楽しくなって来たんじゃない?」
「はいっ!!とっても楽しいです。音を合わせるのは難しいですけど、皆の呼吸がぴったりあったときのあの気分、楽しくてしょうがないです。」
「そうか、君がそう言ってくれると何だか僕も嬉しいよ。」
ほのぼのした雰囲気で八木沢先輩とかなでちゃんがしゃべっている姿に胸が痛む。
八木沢先輩とかなでちゃんの会話が一段落ついたのを見計らって、火積先輩が今度はしゃべりかけている。
「久しぶりだな、小日向。」
さっきのかなでちゃんの満面の笑みにやられたのか、心なしか火積先輩の頬は赤くなっている。
オレに対して怒鳴っていた人と同一人物だとは思えない。
火積先輩とも楽しそうに話すかなでちゃんを見て、オレの胸は更に痛みを増した。

合同練習が終わって、至誠館高校吹奏楽部も現地解散となった。
大急ぎで手入れと片付けを終え、かなでちゃんの下に走ったが、すでに如月兄弟と雑談中だった。
そりゃ、如月兄弟はかなでちゃんと同じヴァイオリンだから、当然パート練習でも一緒、オケ練習でも近い場所だけど……。
何だかもやもやして、練習中は治まっていた胸がまた痛くなってきた。
三人が楽しそうに話しているので割って入っていくこともできず、その場に立ち尽くしてしまう。
そんなオレにかなでちゃんは気が付いて、かなでちゃんは笑顔になった。
「新くんっ。もう、帰れるの?」
「あっ、うんっ。もう、帰れる。」
「じゃあ、一緒に帰ろう?」
断られたらどうしよう、こんなこと言って迷惑じゃないかな、嫌がられたりしないかなっと不安を湛えた瞳でかなでちゃんはオレに問いかけてくる。
断ったりするなんてもったいない、断るなんて絶対ないのに。
迷惑?むしろオレの方がいつも迷惑かけてる。迷惑だなんて絶対ないのに。
嫌がったりなんて有り得ない、むしろ嬉しい。嫌がるだなんて絶対ないのに。
そんな風に不安に思うのはオレの方なのに。
かなでちゃんの周りにはいつも人がいて、かなでちゃんを狙ってる奴なんかいっぱいいる。
あっ、そうか。今日胸が痛んだりもやもやしたのは、嫉妬したからか……。
かなでちゃんと仲良さそうにしている先輩達に嫉妬してたんだ。
「ダメ、かな……?」
なかなか返事をしないオレにかなでちゃんは不安気に瞳を伏せてしまった。
「ダメじゃない!!全然ダメなんかじゃない!!一緒に帰ろう?」
かなでちゃんを不安にさせてどうすんだ。大急ぎで了承の返事をする。
「じゃあ、帰ろう。律兄、響ちゃんちょっと寄り道して帰るね?」
かなでちゃんが嬉しそうに如月兄弟に言うと、二人共、不機嫌な顔をして、早く帰れよっと言っていた。

かなでちゃんと二人で駅前をぶらぶら歩いて後、臨海公園まで足を延ばした。
やっと、かなでちゃんを独占できてオレはかなりごキゲン。
「何か、今日途中から新くん元気なかったね?何かあった……?」
どうしてかはわかっていないようだけど、かなでちゃんはオレの変化に気付いてくれていた。
あ〜オレのこと見ててくれたんだって思ってちょっと嬉しい。
「何かあったっていうか、胸が何度も痛んだんだよね。」
「えっ!?だっ、大丈夫なの!?どうしたの、病気とかじゃないよね!?」
胸が痛んだってそういう痛みじゃないのだけど、こんな風に心配してくれることが嬉しくて、何だかくすぐったい。
「もしかしたら病気なのかも……。」
「ええっ!?病院行こう、新くんっ!!わたしも、一緒に行くから!!」
病気は病気でも、かなでちゃんにしか治せないんだけどな〜。
心配そうにオロオロするかなでちゃんに不意打ちで口付ける。
チュッとリップ音を立てて一瞬かなでちゃんの唇とオレの唇が触れ合った。
「!!??あっ、新くんっ!?」
「今のでもう、治ったよ。恋の病。」
オレがそう言うと、かなでちゃんは怒りながらそれでも安心したように言った。
「もうっ!!心配したのに!!」
「だって、かなでちゃんが悪いんだよ?八木沢先輩とか火積先輩、如月先輩達とすっごく楽しそうにしゃべってるんだもん。
初めて嫉妬とかしちゃったよ。」
オレが口を尖らせてそう言うと、かなでちゃんはびっくりしていた。
「……そうなの??」
「そうなんです!!」
オレが口を尖らせたままそう言いきると、かなでちゃんはすっごく嬉しそうに笑った。
「えへへ、嬉しいなっ。」
オレが嫉妬することが嬉しい?
「ヤキモチやくのってわたしだけかと思ってたから、新くんが嫉妬しててくれたなんてすっごく嬉しい!!」
オレだけじゃなかったんだ。かなでちゃんもヤキモチやいてくれるんだ。その事実がすごく嬉しかった。

Love = Jealousy + Fortune + ・・・etc

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新くんでフライングSS書かせていただきました!!
新くんって帰国子女じゃないですか、かなでちゃんに対して最初から懐いてたようですし、くだけたしゃべり方しそうだな〜
って思って、かなでちゃんに対してはタメ口で書かせてもらいました。
本当は、新と悠人でかなでちゃん争奪戦を…っと思ってたのですけど、気付けばこんなことに。。。
さらに、最後の嫉妬のくだり新くんでなく、むしろ大地先輩で書きたかった。。。っと書いてる時に思ったのですが、もう無理だ……と思い、そのまま最後まで突っ走りました(苦笑
わたしの妄想の中では新くんはこんな子なんです。
題名は、最初は嫉妬とかイメージして…って思ってたんですけど、終始嫉妬しっぱなしなわけじゃないし……っと思いなおし、恋愛は嫉妬やら幸せやらいろんなものでできてんだぞ!!って意味のものにしてみました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございますm(__)m

 

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